頭でっかち
僕は頭でっかちで・・・ここでは中身のことを言いたいのですが、実は肉体的にも僕は頭が大きくて・・・。一ヶ月近くも余分に母の胎内にいたおかげ?で大難産となりこれが母の死期を早める原因の一つとも思われます。まあこれはおいといて・・・。
父から「本を読め、本を読め、乱読でもいいから本を読め」と言われて育ちました。父が想定しているほどの読書量はこなしてはいないのですが、幸か不幸か頭の中で何かとこねくり回す性癖が出来上がってしまいました。
加えて思想的な詰め込みが、そんな自分に輪をかけて肥大化して行きました。色んな事を知っていると言うだけで得意にさえなっている自分でした。
しかし二十歳を前にしたある時をきっかけに、僕は大きく転換して行きました。それは先輩のひと言でした。「実際やったこともないのに、僕たちは偉そうなこと言ってるけど、現実実行しないかぎり、それは全然知らないのと同じじゃないのか」
それまでの積み重ねた牙城が、ガラガラと音を立てて崩れ行くような心の儚さを味わうようなショックでした。確かにそうだな・・先輩の言う通りだな・・・納得するともうじっとしておられない自分でした。脱出!僕の新しいスタートでした。
後に学術的に同様の事柄に触れて、僕は感慨深いものがありました。朱子の「先知後行」・・・知らないことは実行できないわけで、実行するより前に、先ず知ることが大切だ・・・。あの陽明学の王陽明の「人間は実行しない限り真に知ったとは言えない」・・・。王陽明の方が厳しく受止められる。如何に多くのことを知っていても、もし実行しなかったら、それは全然知らないのと同じであって、実行によってのみ、初めて真に知ったと言える・・・。
しかし、一旦身に付いた習性はなかなか切り替わるものではない。未だ論にコトバに終る部分がかなり残っている。だから僕はいつも自らに叱咤する。
「おまえ、やってみたのかよ!」
「言うだけなら誰でも出来るぜ!」
「自分に出来ないこと、ひとに偉そうに言うなよ!」
《夕暮れ》
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