予防線
ゆっくりとした普通の時間が流れていました。
自分が選択した幸せの結末でした。
あの頃に比べれば、止まったような時の静寂に、一種の虚脱感に包まれた僕がありました。
染み付いた習慣で、郵便受けを覗く僕でした。 もう手紙は来ないんだよ・・・自分に言い聞かせる僕でした。 それでも、もしかして・・・幻想は空しく消えました。
何気ない普通の会話をしていながら、心の芯はまだ熱く揺れ動いていました。でもそれはもう言葉にしてはいけない、封印の囁きでした。
何回か経験した否応なしの別離とは、比較のしようのない、気だるく物憂い心の重圧でした。これもまた時が忘れさせてくれる・・・そう思えと言っている自分が涙声でした。
数ヶ月後の僕は無言の人でした。若い日の涙は明日への涙か・・ことばの虚しさ、ことばの弱さを考える僕でした。何故あの時僕は、はっきり言葉に出来なかったんだろう。すべてを失うことの怖さをもう絶対味わいたくない予防線だったのでしょうか。
ゴールのないレースの全力疾走なんて・・・そんな無謀さが僕にはあってもよかったのではなかろうか。おそい、もうおそい・・そんな青春の1ページでした。
夜景(街の灯りちらちら・・・)
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