日曜大工
僕は小学校時代を過ごした、義母の実家の裏の納屋生活が懐かしい。天井は低く、鴨居に頭を打ちそうな薄暗い建物だった。でも南側は母屋の庭に面していて、陽当たりはとてもよかった。
父は日曜日になると、我流も超我流の腕前?で大工仕事に汗を流すようになった。まずは台所、2畳にも満たない狭い空間であったが、洗面所も兼ねた水回りの設備は、完成した時は感激ものだった。
予想以上の好評に気をよくした父は、次にサンルームの制作に乗り出した。その頃僕は勉強する場所がなくて、押入の半分を使って、寂しく勉学に勤しんでいた。その心情を察してかどうか解らないが、かなり大がかりな工事をやり始めたのである。
今僕自身が住宅関連の仕事に従事しているので、よく分かるのだが、父はなかなかの技術者だったと思う。基礎工事、木工事、サッシ、建具等々、全部一人でやり遂げてしまった。
ホントに陽当たり抜群で、隣の薄暗かった部屋もよみがえった。僕はこの部屋に勉強机を持ち込んで、ただ椅子に腰掛けているだけで、ウキウキ気分になった。
僕の人生の中でわずかしかなかった、あたたかい家庭の味・・・貴重な時の流れだったのかもしれない。程なくして始まる波乱の前のやすらぎの静けさであった。
庭先の花
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