夢飛行
生涯を生き抜くエネルギーみたいなものがあるとすれば、僕はそのかなりの部分を、少年期、青年期の前半に費やしてしまったかもしれない。それは世間が見る基準とは比較対照出来ないレベルの話なのだが・・・。だからこそ誰にも言えない心の壁みたいなものが立ちはだかる。
連続した(ある意味惰性化した)生活循環の中では、一応それらしく振る舞ってはいるのだが、心ははるか彼方を彷徨し、定まることを拒絶する。しかし、時に、極々たまに類似の魂とぶつかる幸運を受け、また少し延命の糧(水)をいただく。
彼ら(彼女ら)は鋭敏な感受性と理解力を併せ持ち、その理念の根底には、自己放棄、自己犠牲、献身が宿る。ともに社会規範には当てはまらず、はみ出し者のレッテルを貼られるが、そうした世間的立場によって揺れ動かされることはあり得ない。
青春時代、性的な駘蕩と禁欲的な勉学(修行)に精神を掻き混ぜられ、混濁の中で彷徨っていた魂は一筋の流れ星のように、定めなき一点に落下した。飛び散る破片を我慢強く拾い集め、原型近くにまで修復したとき、光りの芯は永遠に消えることのない核を形成していった。
この世の人生が、霜露のごとく儚きものと知ったとき、時の尺度は一変した。刹那は永遠であり、天女が舞い降りその羽衣に僕が撫でられる瞬時をあらわす言葉はあるだろうか。ほんとに魂は始めなき始めから存在していたのだろうか。そして又終りなき無限の彼方まで飛翔して行くのであろうか。
僕は一瞬書くことをためらった。むしろ・・・自然や身近な人達に、直に書くことの衝動を覚える自分がいた。その作業の新鮮な感覚に酔いしれる自分がいた。そうした交信作業が次元を超えた新しいエネルギーを生み出して行くのを、僕は凝視し、確信した。
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