道標
「どうしてそんなに変われたの?」 「僕、そんなに変わりましたか?」 「変わったわよ〜!あんなに恥ずかしがり屋で、内気で、女の子の前では話も出来なかったのに・・・」 「一種のショック療法ですかね〜」 「何それ・・・」 「喜怒哀楽すべてを、否応なしに強烈に体験すれば、人間変わらない方がおかしいでしょう」 「でも・・・どっちに転ぶかが問題でしょう?」 「僕はいつも、道標みたいな光りは見えてたんですよ。そっちへ行っちゃダメだ、こっちだ、こっちだという灯火がね」 「道しるべね〜・・・」 「でも・・・見えてたって言ったけど・・・ホントは導かれていた・・と思うんです。何なんでしょう?・・誰なんでしょう?」 「でも良かった!あなたが世間騒がせてる変な団体の中心的存在じゃなくて」 「どうしてそんなこと考えたんですか?」 「だって・・あなたってそういうとこあったから。一途というかまっすぐというか・・・」 「ホントは際どかったんですけどね。辛うじてハンドル切りました。思いっきりね。転回禁止をUターンしました。あとひたすら逃げました・・・」 「よくそんな勇気あったね〜」 「勇気かなあ・・・恐怖じゃないかなあ・・・それ以上行くと怖いと思った。尋常の怖さじゃなかった。上手く言えないけど地獄の一歩手前みたいな・・・」 「何はともあれ、あなたの穏やかな顔と目を見て安心したわ」 「ありがとう!わざわざ逢いに来てくれて」 「あまり冒険しちゃダメよ!」 彼女は優しく微笑んで電車に乗り込んだ。僕は見えなくなってもてを振っていた。
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