憤怒の川
僕はあまり、いやほとんど怒りを外に出さない人間だ。僕の怒りの表現は、沈黙であり、無視である。
会社の中で、経営側と労働側の中間に位置する存在となった僕は、大きな命題に直面していた。会社と言っても中身は完全なる同族会社。ぶら下がっているものがあまりにも多すぎた。その仕組みを頭では理解していても、感情では押さえきれないものがあった。「労せずして富を得る」・・・これにも限度があるだろう!ある程度の利益分配はあって然るべきだろう!そんな思いがだんだん募っていった。
経理担当の彼女から資料を受け取り、僕は感情論でなく、ある意味実務的にことを運ぼうと計画した。経営サイドがもっとも嫌うパターンにあえて踏み込んでやろうと思った。
賢弟愚兄と言うけれど、僕は愚弟愚兄愚妻愚親会社(言い過ぎか)の思いが日に日に増していった。何事も深く知りすぎてはいけないと言うことか。見なければ良かった数字が、僕の頭の血管を神経をブチッブチッと切れさせた。
僕の一番の標的はナンバー2に向けられた。右肩上がりのよき時代の産物の典型のような人物だった。あまりの愚かさと放漫に、僕は奴の胸ぐらを掴み3階の窓から突き落としてやろうと・・・心の中で思い、ホントに手が出かかったが、そんな自分を羽交い締めにして止める自分がいて、辛うじて踏みとどまった。
それから僕は石になった。彼に対して黙して語らず。無視。しかしこれにはものすごいエネルギーを必要とした。僕の言葉無き宣戦布告!さて憤怒の川は渡れるか?
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