鈍感
小学校の6年生。僕は放送部のアナウンサーで、みんなが給食を食べているときに、僕は放送室の中にいて、学校ニュースやいろんな連絡事項やなんかを放送していた。
放送が終り教室へ帰ると、お掃除タイムで、僕はいつもホコリの中で冷たくなった給食を食べていた。今はどうか知らないが、昔はあんな時間に掃除してたんだなあと思う。
ある日のこと、いつもどうりに教室へ帰り、ふと机の中を見ると何か小さな包みものがあった。バカな僕は中身をよく確かめもせず「これだれの〜?」とやってしまった。
廻りにいた掃除当番の子が包みを開けると、中にはかわいらしい文房具とメモが入っていた。マズイ!と思ったが時すでに遅し。 5〜6人の子に見られてしまった。なんとメモの主は同じ学級委員の彼女Tさんだったのです。なんという失態!みるみるうちに顔が赤くなるのを感じた。救いは彼女がその場にいなかったこと。でも僕のあさはかな行動が彼女に知れるのは目に見えていた。トホホホ・・・。みんなの冷やかしの言葉も耳に入らないくらい落ち込んだ。思われる嬉しさどころか、彼女を傷つけることの後悔がどんどん涌いてきて、情けなかった。
そんな場面や僕の心情を知ってか知らずか、彼女は不思議なくらい快活に振る舞っていた。でも僕への態度は露骨さはなかったものの、明らかにそれまでとは違っていた。ただ言えることはこの頃って女の子の方が早熟で、どちらかと言えば男の子は異性興味は薄かった。僕は思わぬ形で異性を意識し、それからは彼女が気になる存在となっていった。
そして、そして・・・何十年が経過して、同窓会の事務連絡で話したとき、彼女はそんな事件?にはひとことも触れず、「のんびり専業主婦やってます」との明るい返事に、安堵とちょっとした物足りなさを感じた。しかしそれも事件以後何十年のお互いを考えないで、こんな妄想にとらわれる男の鈍感!いや僕の鈍感にわれながらあきれるばかり。
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