わたなべあきおWeb

手紙

思い切って マッチを擦った

膨大な枚数の手紙を 一枚一枚読み返しながら燃やした

炎の中で文字がゆがみ 言葉を発しているようだった

やがて涙声になり 燃えにくそうに煙となっていった

そっと浮かしてやると 決心したように一気に燃え上がった

心が辛くなり 残りを全部かためて投げ入れてしまった

火はその重みに耐えきれず 消えそうになった

まるで火自身が燃やすことをためらうかのように

ダメを押すようにもう一本マッチを擦った

端っこから サヨナラの声が聞こえたような気がした

形は消しても心は消えないと分かっていても

これも一段階と言い聞かせていた

時が解決するさ・・・他人事のような言葉が自分に覆い被さった

断片的な言葉の一語一語が僕の心に刻み込まれ

燃やす前以上に残ってしまった



(Update : 2004/02/13)