山登り
独りで登る僕の横を、大勢の人達がまるで軍隊のように列を組んで、歩調も合わせて通りすぎていった。
ふと見ると、ちょっとしたスペースに佇む母娘が居た。近づいてみると、彼女たちは岩の隙間にけなげに咲く白い花を見つめながら何か囁いていた。その花を見る彼女たちの瞳はキラキラと輝いていた。
僕は少し離れた所に足場をかため、二人と白い花の入るアングルを確保して、シャッターを切った。ちょっと驚いたように振り向いた二人の顔は微笑んで見えた。僕は親指と人差し指で輪を作り、「good!」と微笑み返した。
見上げると、さっきの隊列はもう最後尾が見え隠れするところまで登っていた。
やがて三人は無言であったが、まるでひとつの家族のように歩き始めていた。
|