先生
先生 ぼくは 先生の逆です 夕べに願い 朝に空しく 崩れいる自分です それでいて どう生きたい 願いなのかと 考え考えしている自分です
先生 ぼくは 先生の逆です ただ じっと 待ってなどいられません 待っていれば 向こうから歩いてござるなんて 決して 決して ぼくは 追います 何もなくても 追います 追ったら 負けだなんて 負けでも 良いじゃないですか
先生 ぼくは 先生の逆です 一本の花 一片の雲 一人のひとの横顔 一語一語 ぼくには それそのものしか 感じられません あらゆる角度の 目だなんて ぼくには そんな日が 何時くるのでしょう
先生 ぼくは 先生のように できません 先生は 日新にして日進 と言われる さらに 月新にして月進 でありたいと 先生には 一歩退き それで良いのか それで良いのかと 振り返る余裕がおありだ ぼくには 後ろが見えない 前方から吹き付ける風を うつむいて こらえるのが 精一杯
先生 ぼくは 先生の逆です それでいい それでいいなんて さりげなく さりげなくなんて もっと もっと 欲しいんです 恋でも なんでも 自分のすべてを 燃やして ぶつかるものが
先生 ぼくは 何でも先生の逆です そこで先生はおっしゃりたいのでしょう 物にも 事にも 裏表 二つの顔があるのだと わかっているんです 先生のおっしゃること すべて でも どうしても ああ これが人生なんだと 割り切れない 悟りきれないんです それこそ ほんとうの 負け惜しみのような気がして こうして 何もかも 反発しているのです お許し下さい 先生
(先生は横田 武・元校長先生)
(22歳・隠岐島の孤独)
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