わたなべあきおWeb

遠い昔の想い出

 彼女は明るく快活だった

 彼女の笑顔は廻りをパッとまぶしく変えた

 彼女の声は少し甲高く少女の響きがあった

 僕はいつも遠くで見ていた

 でも僕はその彼女の太陽を充分すぎるほどに浴びて

 いつも伸びやかな気分にひたっていた

 近寄らなくても・・・話さなくても・・・

 光の届く範囲にいるだけで僕は満足だった

 ある時 偶然二人だけの空間が生まれた

 その瞬間に見せた 彼女の仕草 彼女の心の翳り

 瞳の奥の涙・・・そして

「わたし、一生懸命努力したのよ・・・明るく!元気で!」

 それ以上は聞かなくても想像は出来た

 それくらいの経験はイヤというほどに持ち合わせていた

 僕の存在で彼女の心の空洞を すこしでも

 埋めてあげられたらなあ  と素直に思った

 ほんの瞬間の一面を 僕に見せて

 彼女はまたいつもの明るい快活な彼女に戻っていた


   

(Update : 2003/12/16)