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背景の記憶(251)

三十年前の父だ

柱にもたれ

膝を抱えて

顔を埋め

動かず

黙考していた


何を思い巡らしていたんだろう

足元には

紙と鉛筆が置かれていた

僕には読み取れない

文字が散らばっていた


ただ

「視姦」という一語だけが

読み取れて

心の片隅に引っかかった




小説の中の言葉なのか

現実の中のそれなのか

僕には判断しかねた


義母の入院先へ通う

父の心の動きに

薄ぼんやりとした

怖れを抱いた記憶がある


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posted by わたなべあきお | - | -

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