「黒い雨」
先日の新聞への父の投稿文(語りつぐ戦争)を読んで以来、僕は<原子爆弾>が心に引っかかっていた。18〜19才の時、広島の平和公園の近くで暮らしたことも、原因のひとつだったかも知れない。
僕は書棚の奥から、井伏鱒二の「黒い雨」を取り出して読み始めた。若い頃読んだはずなのに、まるで初めて読むような感じだった。
直接被爆した人達に加えて、救護や介護で広島入りした多くの人達が、早期に原爆病を発症したと言う事実には、改めてこの新型兵器の恐ろしさを痛感する。
とかくヒロシマ・ナガサキは、政治的論議の対象となりすぎた感が強い。僕の若い頃の平和運動への関わりも、多分に政治絡みの影響が強く、観念的、感傷的な部分が、ある意味純な心を支配していたと言えるかも知れない。
この小説が初め「姪の結婚」という連載小説だったというのも、今回初めて知った。その題名の通り、いつの時代も<人間>がテーマである。<人間性>が最も問われるべき事柄であるはずだ。
原爆を落とした国が他国の原爆を許さない。
原爆を落とした国と被爆国がもっとも仲良くしている。
いつの時代も、泣くのは国民・・それだけではあまりに悲しすぎる。
戦争に泣き、戦争に苦しみ、戦争を憎んだ世代の人達が、徐々に声を失おうとしている。
語りつぐのは誰なのでしょうか?
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