親思い
便りのないのは無事で元気な証拠〜と世間でも言うけれど、僕も長い間それに近い気持ちで過ごしてきた。愚痴ほどでもないにしろ、あれこれ話すことは要らぬ心配をさせるだけだと思うところがあった。
しかし最近その考えはちょっと違うんじゃないかと思う僕がいる。遠く離れた親であればあるほど、何気ない日常的な話題がむしろ喜ぶんじゃないかと思うようになってきた。
それに加えて、最近は殊更深く「人生とは・・・?」みたいな命題が僕の心の中を支配してきていて、相談と言うよりは、人生の先輩としての父と意見を戦わせたいような心的欲求が生まれ始めていた。
何よりも九十を迎えようかという父が、そうした命題に今なお立ち向かおうとしている雰囲気が便りの中に伺えて、僕自身がうかうかしていられないという心境になったというのが、正直なところかも知れない。
何をどれだけ僕は父を超えただろうか? 何一つ超えられていないように思えてならない。 戦わせる・・というのは傲慢すぎた。やはり教えを請うと言うべきだろう。久し振りにペンを握った。 「拝啓 父上様・・・」
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