貴婦人

 蘇った<貴婦人>・・・と言っても、僕が勝手に命名した野良猫なのだが・・・。
彼女は、けっこうなお家の(おそらく)飼い猫で、種類の名は知らないが、血統書付と言っても過言ではない、真っ白な毛並みでしゃなりしゃなりと悠然と歩く〜まさに貴婦人そのものだった。

 事情はわからないが、その彼女が野良となってしまったのは、もう五〜六年も前のことだと思う。ガレージの片隅や、家と家の狭い隙間で震えている姿を見かけるようになったのだ。そして火曜と金曜のゴミ収集の日の、散らかしの犯人が彼女であることが判明するには、そんなに日を要しなかった。
 何より容姿が目立ち過ぎるし、育ちの良さ故(?)俊敏さに欠けていた。後始末をぶつぶつ言いながらやっていた僕だったが、カラスとは違って、可哀そうさが先にたって、どうしても憎む気にはなれなかった。
 
 やがて見事な白肌(?)も薄汚れ、自慢の容姿も見る見るうちに痩せ細って行った。どんな事情があったのか知らないが、これほどの家族を放り出してしまった飼い主の家を憎んだりもしたものだ。

 数年後、それなりに野外生活に慣れた彼女は、当然と言えば当然なのだろうが、子供を産み、親としての責任からか・・・おどおどした印象は徐々に消えて、逞しささえ生まれてくるようになって行った。

 最近、その貴婦人一家に変化が生まれてきた。野外生活に変わりはないのだが、どうやら食事の世話をする人間様が現れたようなのだ。僕なりに観察をしていると、その主はすぐ近所の家のお嬢さんのようである。周りには気を遣いながら、そっと呼び寄せて餌を与えている場面を何度か目撃した。

 安心させられたような・・・そうでもないような・・・複雑な気持ちでいる今日この頃である。
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posted by わたなべあきお | - | -

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