遠い世界に

二十歳の頃、叔父の仕事を手伝っていた。

港湾建設のハードな仕事の中、事務兼現場監督兼・・・要するに

何でもさせられていた。

季節労務者の人たちには「あきちゃん」と可愛がってもらった。

飯場のおばさんにも実の子のように接してもらった。

鹿児島出身のひとたちの焼酎に付き合わされ

ほろ酔いで波止場に寝転がって星空を見るのが

唯一の自分の時間だった。

ある時、社長の叔父に言われた・・・

「おまえは<世捨て人>みたいな奴やな」と。

反論するわけでもなく、僕はだまりこくっていた。

そして別れた彼女の言葉を反芻していた。

「あなたはいつも何処か遠くを見ている・・・」

30.7.10-2.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

▲page top