背景の記憶(95)

僕の練った作戦は
あまりに見え透いていて
きみにはばれていたにちがいない


バイトを終えた帰り道
僕は傘をささずに雨の歩道を歩いていた
ゆっくり
ゆっくり・・・と(わざと)


背後に駆け足の靴音
スッとさしかけられた赤い傘に
僕は驚きの表情をして見せた
きみの瞳が笑っていた
無言で並んで歩く間
こころを見透かされたようで
恥ずかしかった



23.10.4.png

♪ただお前がいい
 おとすものなど なんにもないのに
 伝言版の左の端に
 今日もまた一つ
 忘れ物をしたと誰にともなく書く
 そのくり返しを
 その帰り道に笑うおまえ
 また会う約束などすることもなく
 それじゃあまたな と別れるときの
 お前がいい

        中村雅俊(ただお前がいい)

23.10.4自宅の花.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

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