背景の記憶(230)

    先  生

先生 ぼくは 先生の逆です
ゆうべに願い
あしたに空しく
崩れている自分です
それでいて
どう生きたい願いなのかと
考え考えしている自分です

先生 ぼくは 先生の逆です
ただ じっと待ってなどいられません
待っていれば向こうから歩いてござるなんて
決して決して
僕は追います 何にもなくても追います
追ったら負けだなんて
負けでも いいじゃないですか

先生 ぼくは 先生の逆です
一本の草花 一片の雲 一人一人の横顔一語一語・・・
ぼくにはそれそのものしか感じられません
あらゆる角度の目だなんて
ぼくにはそんな日がいつ来るのでしょう

先生 ぼくは 先生のようにできません
先生は日新にして日進と言われる
さらに月新にして月進でありたいと
先生には一歩退き それでいいのかそれでいいのかと
振り返る余裕がおありだ
ぼくには後ろが見えない
前方から吹き付ける風を
うつむいて こらえるのが精一杯

先生 ぼくは 先生の逆です
それでいい それでいいなんて
さりげなく さりげなくなんて
もっともっと欲しいんです
恋でもなんでも
自分のすべてを燃やしてぶつかるものが

先生 ぼくは なんでも先生の逆です
そこで先生はおっしゃりたいのでしょう
物にも事にも裏表二つの顔があるのだと
わかっているんです 先生のおっしゃることすべて
でもどうしても ああこれが人生なんだと
割り切れない 悟りきれないのです
それこそ本当の負け惜しみのような気がして
こうして何もかも反発しているのです
お許しください 先生



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(50年前の手作り詩集)

posted by わたなべあきお | - | -

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