背景の記憶(171)

「きみの夢を見たんだ」

『どんな夢?』

僕は、はぐらかす意味ではなくて、その問いには答えなかった。

『ねぇ〜、どんな夢?』

再度せがまれたが、やはり僕は黙っていた。

「願望なのかなぁ?」

僕は、独り言のように呟いた。

何かを期待してたのか、的はずれと思ったのか、

それ以上、彼女が問いかけることはなかった。

僕はただ・・・

夢の中身を言葉にしてしまうと、すべてが消えてしまうような気がしていた。


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posted by わたなべあきお | - | -

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